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なんと二審も無罪 鹿児島性暴力事件
投稿 12月 23rd, 2014高校生だった女性は、ゴルフの師でもあった男性から強姦され、12月11日、この事件の判決が福岡高裁宮崎支部で言い渡された。二審も無罪。女子高校生は精神的に混乱し、抵抗できない状態だったと認定しているが、一方で、そうした状態を被告が認識していたとは言えないとした。抵抗できない状態であるにもかかわらず、男性がそのことに気づいていなかったから無罪という、あきれた判断だ。
裁判官の勉強不足や性差別的観点による判決をなくしていくためにも、性犯罪、特に強姦罪の基本的な捉えかえし、罰則規定などの改正が早急に必要だ。
法務省「性犯罪の罰則に関する検討会」が10月にスタート。注目していきたい。→keiji12_00090.html
上記、鹿児島性暴力事件については、SSHP全国ネットワークのHPを参照致しました。詳細はnposshp.jimdo.com〈経緯〉
当時18歳で高校生だった女性は、プロゴルファーを目指してゴルフ教室に通っていた。2006年12月、師であるゴルフ場経営者の男性(61)から鹿児島市内のホテルに連れて行かれ強かん被害にあった。
女性は4年後に、ゴルフもできなくなったと告訴したが、鹿児島地検は「嫌疑不十分」と不起訴。
女性は2012年2月に検察審査会に申し立てを行い、同年5月、鹿児島検察審査会は「起訴相当」と議決した。議決書には「男性は、ゴルフ指導の名目でホテルに連れ込み、直前に30分間説教している」と指摘。「年齢や子弟関係から、女性は抵抗することが相当困難な状態になった」との判断により、地検は「議決を踏まえて再捜査する」としたが、8月、再び嫌疑不十分で不起訴処分となった。
2012年10月、検察審査会は準強姦罪で「起訴すべき」と議決。男性は強制起訴されることが確定。検察審査会はさらに、「被害者の従順な性格を利用し、行為を受け入れざるを得ない状況に追い込んだ」と判断している。
12月、鹿児島地裁から検察官役に指定された大脇通孝弁護士らによって、準強姦の罪で在宅起訴された。
2014年3月、日本初の性犯罪で強制起訴された判決公判。鹿児島地裁は、無罪を言い渡した。一審の判決は、準強姦罪は「心神喪失もしくは抗拒不能に乗じ」という規定があり、準強姦罪が成立するには「立場が下の相手の承諾を得ずに性交したというだけでは足りない。 相手が強い恐怖や衝撃で、抵抗や拒否の表明が不可能な精神状態だったことが必要」と規定。また、「信頼していた指導者に突然迫られ、精神的混乱に陥った」と認定しながら、「人間関係の悪化や後の不利益を気にしたとも女性は述べている」などとして、「主体的に抵抗しなかった可能性もある」と判断している。
一審の証人尋問では、安永武央裁判長が女性の性体験に関わることを質問。すぐに指定弁護士が「本件とは関係ない」と異議を申し立てたところ、安永裁判長は「関係あると考えます」と主張。指定弁護士がアメリカやカナダでのレイプシールド法を説明したが、「アメリカやカナダは関係ない。ここは日本だ」と放言。次いで、「関係ないというのは言い過ぎかもしれませんが、判決に向けて被害者の”人なり”を知るために必要な情報である」というような発言をしている。この無罪判決に控訴要請が呼びかけられ、公人による性差別をなくす会も控訴を求める文書を送っている。
※準強姦罪
暴行・脅迫によらない場合も、女性の心神喪失・抗拒不能に乗じ、又は女性を心神喪失・抗拒不能にさせて姦淫した場合は、準強姦罪が成立する(刑法178条2項)。
※レイプシールド法(強姦被害者保護法)
アメリカ、カナダで性暴力の被害者が訴訟で不利益を受けることを防止する目的で制定されたもの。①被害者が当該性行為以外の性的行為に関わっていること ②被害者の過去の性的経験に関する事実についての証拠は例外を除いて排除される
この法律が制定されるまで、性暴力事件において、被害者が加害者との性交に「同意」していた証拠として、被害者の過去の性経験が提出されるというケースがしばしば見られた。加害者のそうした戦術は、被害者に法廷で多大な屈辱を与え、また被害者が告訴することを妨げる原因ともなってきた。1288259834公人による性差別をなくす会の控訴要請文
ゴルフの指導で、厳しい師弟関係にあることを背景に、63歳のゴルフ練習場経営者が、突然、18歳の女性に力によって性行為を強要したとき、女性が抵抗できない状態に置かれたと判断するのは当然のことです。警察庁が行ったアンケート調査でも、このような被害を受けたとき、殺されると思ったとその恐怖心を訴える女性が多いこともにも考慮されるべきです。祖父の年代にあたる男性から強いられて、 「性交を拒否することが著しく困難な精神状態に陥っていたと評価することはできない」という判断は、女性差別撤廃条約、国連女性差別撤廃委員会一般勧告第19号、2009年女子差別撤廃委員会第44回「日本に対する最終見解」にも反するものです。また、「女性が人間関係を壊さないため、主体的に抵抗しなかった可能性も排除で きない」という判断は、単なる推測により被告人を免責するもので証拠に基づく客観的な判断ともいえません。むしろ、指導者の指導を失えば、女性がプロゴルファーとしての道を絶たれてしまうという現実的かつ具体的な恐れを抱くのは当然のことで、このような司法判断は、偏見に基づく性差別という以外にないものです。
プロゴルファーを目指して励んでいる女性を指導しているという立場を利用しての性暴力=「魂の殺人」と言われる強姦罪の免罪を容認することは、到底許されるべきではありません。
私たちは、こうした判決は直ちに改められるべきだと考え、ここに控訴するよう強く要請する次第です。なお、このような要請は、国内のみならず、国際社会の強い要請であることについても付言します。