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2014.7.6 都議会差別ヤジに関する都議会議員アンケートの報告
投稿 7月 10th, 2014皆さま
短期間でしたので、回答率は予測したとおりですが、女性議員の回答率は52%でした。
都議会議員アンケート報告(HP用)
コピー都議会やじアンケート集計表また、7月7日には「都議会・性差別やじ問題の幕引きを許さない緊急集会」が開かれ、パネリストの一人として、公人による性差別をなくす会から中野麻美が発言。以下は、その発言要旨です。
元石原都知事の女性や外国人、障がい者などに対する差別発言は氷山の一角で、都議会でも激しく乱暴な野次が「日常風景」だったようだ。今回の差別野次が取り上げられたことで、そうした都議会のあり方が問われることになった。
自民の吉原修幹事長は会派内の調査をふまえたとして「他の野次を聞いた人はいなかった」と話していたとのことだが、それだけ野次が当たり前のように日常化していたということかもしれない。「問題視されるほどの発言なのか」とか、「言った本人の問題」、という考えも議員のなかにはあると報道されている。また下劣な野次をまともに取り上げる必要があるのかという考え方、表現の自由の観点からそれのみを問題にすることはできないといった考え方もあるかもしれない。しかし、この野次は公の場において公人によってなされた「発言」である以上、私たちは、自分たちの問題として真剣に取り組むべき課題だと考えた。そうしたこともあって、公人の会は都議会議員にアンケート調査を実施した。
期間は6月24日から7月5日までとした。都議会における差別的野次に関するアンケート調査結果
各会派等(平成26年6月23日現在)とアンケート回収状況会派(人数) 回答数
東京都議会自由民主党 58(うち女性3)人 0
都議会公明党 23(うち女性3)人 1
日本共産党東京都議会議員団 17(うち女性11)人 14
都議会民主党 15人 1
都議会結いと維新 5(うち女性2)人 1
みんなの党 Tokyo 4(うち女性2)人 2
都議会生活者ネットワーク 3(うち女性3)人 2
無所属(深呼吸のできる東京) 1(うち女性1)人 0
無所属(都議会再生)1人 0現議員合計 127(うち女性25)人 21名(うち女性13名)回収
回答者のうち、女性25名中13名と過半数の議員が回答している。
公明党は与党でもあり、微妙な立場に置かれていることが回答に影響したと思われる。
民主党は女性議員が一人もいないことが回収率に影響を与えているものと考えられる。
回答者は、この問題に積極的に取り組む姿勢のある議員であると考えられる。
ほとんどが、差別野次は人権侵害であるとし、何らかの意味での規定を設けてこのような野次・発言がなされないようにすべきだという意見であるが、違法ではないが不適切な発言であるという意見もあった。また議場における発言の禁止については表現の自由から問題があるという回答や、真相の究明については、処分を前提にしないことが真相究明につながるという意見もあった。発言の評価や対応について、意見の角度や配慮しなければならない事柄についてスタンスの違いが見える。また、野次への同調となるような「笑い」などは個人の良心に委ねるべきだという意見もあった。いずれにしてもそうした「笑い」自体戒めるべきであって、抑制されるべきだと考えているが、これにどう対処するかについての見解は分かれている。選択肢のどれが正解であるかというのではなく、回答のすべてを受け止め、尊重して、都議会及び都政に私たちの政策要求としてとりまとめ、その実現に向けて行動したいと考えている。
アンケート質問項目と回答数(複数回答あり)は、別掲をご覧ください。
この問題は、なぜ、社会的問題であって、私たち自身の問題であるのか。
(1)民主主義の基盤として
一つは、地方自治という私たちの生活と権利に直接かかわる都議会という場で、今後の日本の経済・政治・社会のあり方を左右する男女平等政策についての議論の席上行われたことからの問題である。
差別発言は、本来自由であるべき人の精神と行動を制約して、持てる力を発揮させなくしてしまう。結婚や妊娠・出産にかかわる事柄については、人にはいえない、深いところで人の尊厳に触れるもので、人によっては消えない心の傷になっているという性質をもっている。採用面接に際して「今後の妊娠の可能性」を聞かれて身動きできなくなってしまい、面接に対する恐怖心から就職へのステップを踏めなくなってしまったという相談を受けたこともある。差別は、人の行動の自由を制約し、打ちのめしてしまうが、それが議会で行われたときには、民主主義的な討議の基盤を奪うことになる。男女平等政策のあり方が、このような発言によって制約されることになれば、重大な問題である。(2)この発言の基本的な性質は、公人による差別であること
● 自分が結婚したらいい、産めないのか、などの発言は、石原ババア発言と本質的に通底する差別発言である。女性の存在価値を産むことに特化して、まずは「産む」という社会的責任を果たしてから物を言えという意味に受け止められる。そういう意味では、「生殖機能を失っても女性が生き続けるのは地球にとって無駄で罪」という石原発言と同質である。
● 日本のジェンダー平等指数の低さは、女性の稼得力の低さと議員数など政治分野での女性比率の低さが大きく影響している。このような状況を決定づけているのが、妊娠・出産による不利益をなくしたり、育児などの家族的責任を男女が平等に担っていけるようにすること、さらには社会がそうしたことをフォローするシステムが決定的に不足しているということではなかったのか。
● 都議会では、都議会への欠席事由に病気とともに出産を認めているだけで、女性議員の妊娠・出産への配慮は全く確立されていない。したがって、この野次は、女性の存在価値は産むところにあり、そうした妊娠可能な年代にある女性は議員として政策を論議する場にいなくてもよいということになる。その意味で、この発言は女性差別撤廃条約2条の差別の定義に該当する。そして、東京都男女平等参画基本条例は、14条で性別による権利侵害を禁止しており、本件野次がこの14条に抵触する行為であることは明白である。(3) 東京の未来設計に女性の声を反映させるうえで重要なこと
● 将来の少子高齢化が急速にすすみ、地域社会の持続性が問われているが、その未来をどうするかという議論を、このような発言がまかり通る都議会に委ねておくわけにはいかない。
● 東京都男女平等参画条例は、7条で、都民及び事業者は、男女平等参画を阻害すると認められること、又は、男女平等参画に必要と認められることがあるときは、知事に申し出ることができると定め(1項)、知事は、前項の申し出を受けたときは、男女平等参画に資するよう適切に対応するものと定めている。
● 今回の都議会における野次問題については、前記趣旨に基づいて、議会運営のあり方について、規則を改正し、男女平等参画基本条例の趣旨目的を実現する規定を整備するよう求める必要があり、条例に基づく責任として、都知事にこれに対応してもらうことが重要。
● アンケートの回答でも、規則などの改正・整備の必要は、各議員からその必要性があるとの回答をいただいている。このようなことが問題になったときに、必ず提起されることとして、表現の自由を保障する観点から、禁止するより、個人に委ねるべきだという考えもあるだろう。しかし、逆に、表現の自由の基盤には思想の自由があり、差別によって自由な精神活動が妨げられれば表現の自由もないことを念頭に置くべきだと思う。とくに野次は、その必要性も社会的相当性もないもので、「暴言」そのものといってよい。この野次は、日本の社会全体にある根深い女性に対する偏見や固定観念を象徴している。