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メディアから回答もらいました 大阪桜宮高校体罰問題報道からみるメディアの責任についての公開質問状
投稿 8月 18th, 2013石原都知事の女性差別発言を許さず、公人による性差別をなくす会(以下、公人による性差別発言をなくす会)は、大阪桜宮高校体罰問題報道から見るメディアの責任について、本年5月21日付で公開質問状を朝日、東京、毎日、読売新聞に送付しました。6月10日までの回答期限に、読売、毎日、朝日新聞からそれぞれ、質問事項に沿って、該当する掲載記事を添付しての丁寧な回答をいただきました。
私たちは、それぞれに送っていただいた掲載記事を検討した結果、次のような感想を持ちました。
毎日新聞は、私たちが質問した項目について、大阪本社記事にはかなりの紙面が割かれていること、 体罰問題の掘り下げや橋下大阪市長の言動への批判も一定程度なされていること。また読売新聞は、体罰自体を普遍的に取り上げた記事の東京版への掲載も多く、問題を広く提起し、共有していこうとの姿勢がうかがわれました。朝日新聞も大阪本社の記事は、東京版を読んでいてはうかがい知れないことが報道されていました。「元巨人軍の桑田さんの談話」も東京版、大阪版ともに掲載されていたのは良かったと思います。
私たちは、再発防止のためにも、体罰問題を人権侵害としてトータルに検証することが重要と捉えています。しかし、「スポーツ部活動での体罰は禁止、しかし体罰そのものは必要な時もある」と発言した橋下市長が、体罰問題を人権侵害ととらえていないこと、橋下市長の行動の検証及び批判が特に東京版においてみられないことなど、メディアの社会的役割という点で、疑問が残りました。
公人による性差別をなくす会は、これを機会に、さまざまな形でメディアに対して、意見、感想などを出して行きたいと考えています。
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大阪桜ノ宮高校体罰問題報道から見るメディアの責任について 公開質問状
私たちは、メディアにおけるこれまでの橋下徹大阪市長関連の報道が大阪府知事時代を含めて橋下氏の言動を過剰に追いかけることに終始し、批判的検証がないことに疑問をもっていました。その疑問は、昨年12月に明らかになった大阪桜ノ宮高校バスケットボール部の体罰問題報道においてますます大きくなりました。大阪桜ノ宮高校の体罰問題報道でもっとも求められていたことは、学校教育現場における体罰の背景や児童生徒に与える影響、体罰とはいかなる問題であるのかを掘り下げることでした。しかし、各紙に掲載された記事は、橋下徹大阪市長の言動を追いかけることに終始しました。
体罰問題で報道に求められたことは?
体罰とは学校教育現場のみならず、日本柔道連盟オリンピック女子強化チームにも見られたように、強い権限と支配力を持つ立場の者がその「支配下」にある者に振るう精神的・肉体的暴力行為であり、人権侵害です。大阪桜ノ宮高校における体罰問題も、単にスポーツクラブ活動における指導上の問題ではなく、桜ノ宮高校の教育内容が人権尊重の観点に貫かれたものであったのかどうか、教師や生徒が日ごろから自由に発言できる環境にあったのか、これまでの学校の在り方を問う問題でした。桜ノ宮高校では、普通科でも体罰はあったというアンケート回答や、他の教師が「体罰は誤った指導だ」と認識しながら、「素晴らしい指導をしている先生で、意見は言えなかった」という事件後の聞き取りが報道されています。桜ノ宮高校の体罰問題で学校当局や教育委員会がなすべきことは、事実を正確に明らかにし、体罰を生み出した根本原因を解明すること、そしてこれからどういう学校にしていくのかを教師と生徒がきちんと話し合うことだったでしょう。それを促すのが報道の大切な役割であると、私たちは考えます。同じころ滋賀県大津市のいじめによる自殺という痛ましい事件がありました。いじめも体罰も暴力です。この問題を関連付けて、学校教育現場から暴力をなくすためには?と掘り下げる記事が報道に求められていたと思います。
橋下市長介入の問題点は報道されたか?
橋下徹大阪市長の大阪桜ノ宮高校体罰問題への対応は、行政の長が学校教育に介入し、予算権を振りかざして教育委員会や学校当局を従わせるという誤ったものでした。しかし、各社の報道では橋下市長の介入を批判する記事は見当たらず、橋下市長の介入が当然のこととして連日報道されました。
橋下市長は体罰問題を人権侵害ととらえることなく「遅れたスポーツ指導の問題」に限定し、桜ノ宮高校関係者の遅れた意識の問題に矮小化しました。橋下市長は自らの「スポーツ指導上の体罰容認発言」については撤回したものの、いかなる体罰も容認しないという態度表明はしませんでした。彼には体罰=暴力=人権侵害という認識はなかったからです。
橋下市長は、体罰の原因を「炎の源は教員であり、生徒の意識、保護者の意識だ。まず教員を入れ替え、生徒、保護者の意識を改めていく」「このまま入試をすれば同じ意識で生徒が入ってくる」として、体育科・健康学科の入試中止を予算凍結の脅しをもって強行しました。また、桜ノ宮高校の教師全員の総入れ替えを要求し、「体育教師が新学期に残っていた場合は体育教師分の人件費は出さない」とまで述べました。
そして体罰やいじめが起こった際に市長が調査権限を持つ「市長の調査権限等に関する条例」を可決させました。条例は、教育分野のみならず交通局など市長から独立した部局への市長の介入権限を認めるものです。橋下市長は、市長の独裁的権限強化のために桜ノ宮高校体罰問題を利用したのです。メディアの責任
メディア各社は、橋下市長のこのような一連の言動を事実として報道するのみで、問題点の提示を怠りました。無批判に橋下徹氏の言動を垂れ流す報道姿勢は、橋下氏関連報道に一貫して見られるメディアの大きな問題点です。大阪桜ノ宮高校体罰問題の報道においても独自に問題を検証する姿勢は見られませんでした。それはジャーナリズムの使命と責任を放棄するものであると、私たちは考えます。
そこで、以下の質問にお答えください。
質問事項
1)貴紙は本年1月10日に、橋下市長が市長直轄の調査チームを作ると述べたと報道しましたが、調査結果の内容についての報道を見つけることができませんでした。
貴紙は、橋下市長による調査結果、および教育委員会による調査結果についてその内容を報道されましたか?
2)貴紙は、橋下市長の体罰容認発言とその撤回について、内容の追及や掘り下げをされましたか?
3)桜ノ宮高校教員の人事異動結果を含め、新学期以降の追跡取材と報道をされましたか?
4)橋下市長の一連の言動について、貴紙の評価を明らかにされましたか?
5)桜ノ宮高校「体罰」問題について、貴紙独自の検証記事を掲載されましたか?
6)同時期に起こった滋賀県大津市のいじめ自殺問題と合わせて掘り下げた検証をされましたか?