• 安倍首相 「慰安婦」問題に関する、勧告実施についての公開質問状

    投稿 6月 24th, 2013

    「慰安婦」問題に関する、国連人権機関からの勧告実施についての公開質問状を、安倍首相宛てに送付しました。回答期限は7月1日です。


                                          2013年6月22日
    内閣総理大臣 安倍晋三 様
    「慰安婦」問題に関する、国連人権機関からの勧告実施についての公開質問状

                                      公人による性差別をなくす会
                                                                             あなたは、5月15日の参議院予算委員会で、橋下徹大阪市長の「慰安婦」問題発言について、「安倍内閣、自民党の立場とは全く違う発言だ。(慰安婦の)筆舌に尽くしがたい、つらい思いに心から同情している」と発言しました。しかし橋下発言の背景には、「慰安婦」問題や過去の戦争について歴代内閣が継承してきた歴史認識を変更するというあなたの意思表明があります。国際社会では橋下発言(2013年5月13日)以前から、あなたの歴史認識に危惧や批判が表明されていました。橋下発言とは立場が違うとするなら、安倍内閣は「慰安婦」問題の解決に向けてどのような立場をとるのか、国連人権機関からの度重なる勧告をどう受け止め、どのように実施につなげるのか伺いたく、以下、質問します。

    あなたは、以下のような発言をしています。
    ●2012年9月16日 自民党総裁選討論会
    「河野洋平官房長官談話によって、強制的に軍が家に入り込み女性を人さらいのように連れて行って慰安婦にしたという不名誉を日本は背負っている。安倍政権の時に強制性はなかったという閣議決定をしたが、多くの人たちは知らない。河野談話を修正したことをもう一度確認する必要がある。」
    ●2013年2月17日 衆議院予算委員会
    「河野談話」の見直しを示唆。(東京新聞5月15日付報道)
    ●2013年4月22日~23日 参議院予算委員会
    「村山談話」について「安倍内閣としてそのまま継承しているわけではない。」
    「侵略の定義は学会的にも国際的にも定まっていない。」

    これらの発言はすべて橋下大阪市長の発言以前のものであり、橋下市長はあなたの発言を踏襲し補完しようとしたのだと読み取れます。

    このようなあなたの発言に対し、国際社会は厳しい批判の目を向けてきました。
    5月1日に米議会調査局がまとめた日米関係の報告書ではあなたを「強固な国粋主義者」と表現し、あなたの発言を注視しています(東京新聞5月15日付報道)。韓国の朴大統領は、「何度も傷を疼かせ、韓国国民を刺激している」と述べ、訪米時には「歴史に目をつぶる者は未来が見えない」と日本を批判しました(同上)。これは1985年、同じ敗戦国だったドイツのワイツゼッカー元大統領の演説の中の「過去に目を閉ざす者は、未来に対してもやはり盲目となる」という著名な警句を踏襲したもので、政治家や国民の姿勢を厳しく問うものです。橋下発言に対するあなたの発言に、中国の人民日報は「自民党は橋下氏と維新の会に国内外の批判が集中しているのを利用し、世論が安倍晋三首相の誤った歴史観の追求に向かうのをカムフラージュしている」と指摘しています(人民日報5月28日付海外版)。

    日本政府は国連の各人権機関から「慰安婦」問題の早期解決を求める勧告をたびたび受けてきました。
    自由権規約委員会の第5回日本政府報告に対する総括所見22項(2008年10月30日)、女性差別撤廃委員会の第6回政府報告に対する総括所見37,38項(2009年8月7日)、社会権規約委員会の第3回日本政府報告に対する総括所見26項(2013年5月17日)、そして直近の拷問禁止委員会の勧告です(2013年5月31日)。
    拷問禁止委員会は、人間の非人道的な取り扱いを禁止する条約を守っているかどうかを調べる国際機関であり、慰安婦を条約上の被害者だとしています。そして、「日本の政治家や地方の高官が事実を否定し、被害者を傷つけている」と批判し、日本政府の見解をただし、解決策を求めています。

    拷問禁止委員会は「慰安婦」問題について効果的ですみやかな立法および行政的措置を行い、被害者中心の解決策をとるよう、以下のように求めています。
    a) 性奴隷制の犯罪について法的責任を認め、加害者を訴追し、適切な刑をもって処罰すること。
    b)政府当局者や公的人物などが繰り返し事実を否定することによって、被害者に再び精神的外傷を与えるような動きをしていることに反駁すること。
    c)関連する資料を公開し、諸事実を徹底的に調査すること。
    d)被害者の救済を受ける権利を確認し、それに基づいて十全で効果的な救済と賠償を行うこと。
    e)この問題について公衆を教育し、あらゆる歴史教科書にこれらの事件を記載して、本条約の下での責務に対するさらなる侵害がされないよう予防する手段とすること。

    日本政府は国連人権機関からの勧告に対し、「従わなくてもよい」という立場をとってきました。拷問禁止委員会からの勧告に対しても「法的拘束力はないから従う義務はない」という答弁書を閣議決定したとのことです。しかし、締約国には条約を遵守する義務があります。日本国憲法第10章「最高法規」中の第98条は「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と規定し、国際条約に憲法に準ずる法規としての位置付けを与えています。国連人権理事会理事国である日本には、率先して国内人権状況の改善に努力する義務があるのです。

    上記の拷問禁止委員会勧告について、安倍内閣としてどのように受け止め、いつまでにどのような施策をとられるのか、お答えください。
    ご回答は7月1日までに当会の上記連絡先あてご送付またはご送信ください。
    なお、この質問状とあなたのご回答は当会のホームページに掲載し、メディアに周知致します。

    以上

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