• 連続学習会 第2回

    投稿 2月 20th, 2010

    「公人の憲法尊重・擁護義務」

    報告1「憲法99条の意味と背景」…報告者 永井よし子

    ・  “公人”の狭義及び広義の定義を示した上で、憲法99条の意味と位置付けを探った。憲法第10章(最高法規)は、99条を含む3条から成る。97条(基本的人権)、98条(憲法の最高法規性と条約・国際法規の遵守)に続き99条は公人に憲法尊重・擁護を義務としている。憲法上、この義務は重視されている。その立場にある者の差別発言は重大な憲法と条約の遵守義務違反である。

    ・それを前提に、「日本国憲法」制定時からの時代背景を急ぎ足で辿った。日米安保下の民主化の押しつ押されつ状態、冷戦の終焉から同時多発テロ、バックラッシュと新自由主義的経済的社会的変化とその破綻などの流れの中で、憲法は、一定程度の定着はみたが、憲法の精神が十分実現したとはいえない。個人意識の浸透、ジェンダーや人権意識の広がりなどの反面、人権の確立は未熟だ。

    ・さらに、改憲議論の過程で99条がどのように議論されたかなどについて触れた。

    (参考文献:『あたらしい憲法のはなし』(文部省)『民主主義』(文部省)『日本国憲法概説』(佐藤功)『日本国憲法資料集』(樋口陽一・大須賀明)『憲法の争点 第3版』(ジュリスト)『憲法のことが面白いほどわかる本』『高校生からわかる日本国憲法の論点』(ともに伊藤真)『憲法改正の争点』(渡辺治編著)『憲法2統治』(渋谷秀樹・赤坂正浩)

    『衆議院憲法調査会報告』(衆議院憲法調査会)『公人』『公務員』(ウィキペディア))

    報告2「憲法99条と公人の性差別」…報告者 亀永能布子

    ・性差別をなくすために99条は有効かの観点から考える。

    ・ 男女平等・性差別に関する憲法条文の検証

    (1) 憲法13条(個人尊重主義と幸福追求権):14条とともに男女共同参画社会実現の重要な規定である。この時、人権のない様にかかわらず女性が男性と等しく扱われればよいのではない。男女とも、人間らしく人権を享受して暮らすことが目的。今日の学説では幸福追求権を憲法上の個別の権利の総称というよりも個別の権利が妥当しない場合の補充的適用条項と解される。

    (2)  憲法14条(法の下の平等):学説は性差別を①生物的性差による別異取り扱い ②典型化された特性に基づく差別 ③性別役割分業に基づく差別に区別、②③は合憲推定を排除するのが有力、①では不合理な差別が正当化される傾向にあり、14条の相対的平等論の限界が示されている。

    (3)  憲法24条(家族生活における個人の尊厳・両性の平等)家族形成の自己決定権を保障する13条と、これまで法律婚による家族を公序とする根拠とされた24条が抵触する範囲が広まる。個人尊重による現代型家族の自己決定権との調整が問題となる。

    ・ケーススタディ:「杉並区教育委員の発言」「痴漢犯罪の最高裁逆転無罪判決」「石原都知事の“元美

    人発言」などが挙げられた。

    ・ 99条を活かせるか:99条違反は立法、行政、司法その他の公的領域でも不問に付されてきた。99条単独での効力を期待できないが、99条の存在を喚起し、義務をつきつけていきたい。

    (参考文献:『基本憲法』(辻村みよ子編著)『ジェンダーと法』(辻村みよ子)『性差別と暴力』(角田由紀子)『最高裁判決文』(2009.4.14)

    .