• これまでの国際活動のあらまし

    投稿 7月 12th, 2009

    国際活動

    石原発言の差別性について、国際的には、「女性差別撤廃条約」の上からも、市民的人権感覚の上からも問題であることは常識とも言える。2002年暮れの提訴を知った海外から、何通もの抗議の手紙が石原都知事に送られた。またドイツからは、15人の署名を添え、謝罪の報道があるまで日本製品や日本レストランをボイコットするとの手紙が在ドイツ日本大使館経由で届いた。
    その後、05年2月24日の第一次訴訟地裁判決日に私たちが行った外国人記者クラブでの記者会見でも、石原発言は女性差別だという共通の認識が見うけられた。それは、「われわれの国にも差別はあるが、政治家がこのような発言をしたら次の日には辞職しなければならないだろう」というイタリア人記者の発言に代表される。これが世界の常識なのだ。

    もっとも重要なことは、日本は、1979年に国連で採択された「女子に対するあらゆる形態の差別の撤廃に関する条約」(以後、「女性差別撤廃条約」と略す)の批准国(1985年6月)であることだ。条約は、その第1条で、「女性に対する差別とは、性に基づく区別、排除又は制限」と定義し、「政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のいかなる分野」においても、男女の平等な人権の享受を求めている。そのため、第2条で、女性差別を撤廃する政策の実践を締約国の義務としている。
    いうまでもなく日本国憲法は基本的人権を保障し、法の下の男女平等を謳っているので、この条約はその良き同伴者ともいえよう。

    さて、条約は、締約国政府に対し、条約の遂行状況を定期的に女性差別撤廃委員会(CEDAW)に報告することを求めている。

    日本の第4・5次政府報告書が9年ぶりに委員会で審査されることになった2003年7月の会期に向けて、怒る会の事務局メンバーは、このためにまとまったネットワーク“日本女性差別撤廃条約NGOネットワーク”(以下、JNNC)に加わり、事前の作業部会、本番のニューヨーク会議に参加、資料を配ってCEDAW委員に働きかけた。その結果、本審査の場で、複数の委員が公人の差別発言に触れ、日本政府の方策を質問した。これに対し、政府代表の坂東眞理子内閣府男女共同参画局長(当時)は、「公人の問題発言は、マスコミが取り上げるのが最大の制裁、予防になる」と回答した。この会期の最終報告には、石原発言に関する直接的な懸念や勧告は盛り込まれなかったが、間接的には「女性に対する差別の定義を国内法に盛りこむこと」「条約に関する認識(中略)を向上させるためのキャンペーンを、とりわけ国会議員、裁判官及び法曹関係者一般に行う」ことを勧告した。

    第6次政府報告書は、2009年7月23日にニューヨークで審査された。
    政府報告書が公表されたのは、08年の4月。これを受けて、第二次NGOネットワーク(JNNC)が活動を再開した。事務局からは永井が担当してJNNCに参加、今回も欠けていた公人の差別発言について、問題意識が欠落した政府の現状を打開すべく、11月の作業部会に向けて働きかけることにした。作業部会は本審査に先立って、政府報告書に対する“List of Issues”(報告書への質問事項)を作成する。開催地ジュネーブを訪れ、その際、手渡した独自資料が、“List of Issues”には「公人の差別発言」に関する独立した1項に実った。しかし、質問事項に対する日本政府の回答は、依然として、型通りの広報啓発活動、研修、情報提供に留まり、質問にまともに向き合った回答にはなっていなかった。

    続く09年のニューヨークでは、7月23日、CEDAW委員会で日本政府報告書が審査された。この会議に際し、JNNCは統一レポートの提供のほかに、CEDAWによるNGO非公式ブリーフィング、JNNC設定のランチタイムブリーフィング、本審査傍聴を協力して行った。他の課題を抱えたり、現地滞在者を含め、石原発言関係者の参加は8名だった。
    8月7日、CEDAWから日本政府に向けて「総括所見」が公表された。公人による女性差別発言については、「ステレオタイプ」の項(29、30)で明確に懸念と要請が示された。

    [関連資料①:2003年にCEDAW委員他参加者に配ったチラシ等](英語版)
    [関連資料②:2008年11月 CEDAW作業部会への提供資料](日本語英語版
    [関連資料③:2008年11月 CEDAW作業部会のList of Issues N0.17]と政府回答(英語版
    [関連資料④:2009年7月会期提供資料 (1)List of Issuesに対するNGO回答(英語版
    (2)ジョイント・レポート(英語版
    (3)独自資料(英語版

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