「ババァ発言」と第一次訴訟判決

「ババァ発言」と第一次訴訟判決

石原都知事が「ババァは有害」といった女性差別発言を行ったことに対して、公開質問状を提出したが、真摯な対応も回答もあられなかったために、発言の謝罪と撤回を求めて東京地裁へ提訴した（2002年12月20日）。同時に日本弁護士連合会（日弁連）人権擁護委員会へも人権救済申立てを行った。日弁連は2003年12月25日、私たちの申立てを全面的に受け入れて石原都知事に対して発言を撤回、謝罪するよう「警告書」を出した。また、東京地裁は、2005年2月24日判決した。名誉毀損、損害賠償の請求は棄却したが、石原都知事の発言は『憲法、男女共同参画基本法や国際人権規約など国際社会における取組の基本理念と相容れない』とした。

高裁でも原審を踏襲した内容で原告の訴えは退けられた。
その取組の経過を示す。原告団は最高裁へ上告せず、更なる石原の差別発言について別の訴訟（第2次訴訟）を準備することにした。

◎こんな差別発言が都知事の口からでるとは！

2001年11月6日号の『週刊女性』にこんな発言が掲載されました。
「これは僕がいってるんじゃなくて、松井孝典がいっているんだけど、〝文明がもたらしたもっとも悪しき有害なものはババァ〟なんだそうだ。〝女性が生殖能力を失っても生きているってのは、無駄で罪です〟って。男は80、90歳でも生殖能力があるけれど、女は閉経してしまったら子供を生む力はない。そんな人間が、きんさん、ぎんさんの年まで生きてるってのは、地球にとって非常に悪しき弊害だって……。なるほどとは思うけど、政治家としてはいえないわね（笑い）。」
さらに、都の「少子社会と東京の福祉」会議（2001年10月23日）席上で「この間すごい話をしたんだ、松井さんが。私は膝をたたいてその通りだと。女性がいるから言えないけど…。」と自らも同意見と発言したのです。

「松井教授は本紙の取材に対し、『おばあさん仮説は現生人類が文明を築く上で、おばあさんが重要な役割を果たしたという内容だ。それがどう理解されるかは関知しないが、（前回の訴訟の）東京地裁、東京高裁の判決で私の仮説と石原知事の発言は相容れないと認められている。すでに決着の付いた問題で、今回新たに付け加えることもない』と話している。」

（東京新聞２００７年３月２８日）

石原都知事、都議会に公開質問状を提出

◎ 石原の女性差別発言に怒った女たち（東京都在住・在勤者447名）が石原都知事と都議会宛に公開質問状を提出。（2002年6月25日）真摯な対応も回答もなし。

日弁連人権擁護委員会へ147名で人権救済申立てを行う（2002年11月29日）
◎ 日弁連より石原都知事に対して「警告書」が出された（2003年12月25日）※注1
※注1女性に対する肉体的、精神的に苦痛を生ぜしめる暴力であり、また女性を人格的に侮辱し、心の平安と生活の平穏を奪う差別発言であるのでしかるべき方法によって発言を撤回し謝罪する措置をとることを求めるとともに、今後貴殿がこのような差別発言をすることのないように警告する

第一次訴訟

131名の女性たちが、提訴。（2002年12月20日）
発言の撤回と謝罪、名誉毀損と①尊厳をかけて幸福を追求し、性のいかんにかかわらず平等に生きる権利、②生殖について自己の選択の下に生きる権利、③平穏に社会生活を営む権利、④高齢者が敬愛されて生きる権利の侵害による損害賠償を求めた。

◎ 第一次裁判東京地裁判決（2005年２月24日）
＊第一発言は被告個人の見解ないし意見を表明したものと認めるのが相当
＊このような女性の存在価値を生殖能力の面のみに着目して評価する見解が個人の尊重、法の下の平等について規定する憲法、男女共同参画社会基本法その他の法令や国際人権B規約、女子差別撤廃条約その他の国際社会における取組の基本理念と相容れない

裁判所は、発言は都知事の見解であり、憲法や法令・条約に反し、不適切・不用意と認めながら、発言は女性全般に対するものだから個々人の権利、利益に対する影響は、それだけ希薄化されたものになると名誉毀損や損害賠償の請求を棄却したのです。
◎ 113名で高裁へ控訴（2005年3月25日）
◎ 第一次裁判控訴審判決（2005年９月28日）
＊ 石原発言の違法性は地裁判決を維持
＊ 権利侵害については、地裁より踏み込んで都知事は個々人の権利を制約する権能をもっていないからと否定
☆ 東京都の首長という公人がこんな差別発言をしても撤回・謝罪すら求めることができないままでいいのでしょうか！
☆ 女性全体への暴言だから権利や利益への影響が「希薄化される」？なんて！