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「裁判のための裁判、シャケ発言」と第二次訴訟判決
「裁判のための裁判、シャケ発言」と第二次訴訟判決
2006年4月20日、第一次訴訟の東京地裁判決後の都庁定例記者会見における更なる差別発言の謝罪と撤回を求めて石原都知事と東京都に対し、東京地裁へ提訴。高裁でも争い、最終的には、最高裁判所へ上告した。その裁判の経過とますますひどくなっていく判決内容を示す。2008年11月11日上告棄却が出て第一次訴訟から6年間の長い裁判闘争は終了した。
◎ 原告を侮辱する、第二の差別発言
2005年2月25日、都庁定例記者会見で、一審判決の感想を聞かれて、
「判決よりも裁判そのものが不思議なんですね。松井孝典教授が温暖化も含めて、人間というのは文明をつくって、非常に我欲というものが表に出てきて、願望が堆積していくことで、結局動物までも使役するようになり、人間と動物の関係も変わり、世の中の循環が非常に狂ってきた。文明の促進で。非常に自然の循環に変わる悪い循環を人間がつくっちゃった。だから、あっちゃならないものまでいろいろあるようになった。ひとつの例として彼が言ったんだ。」
「動物というのはみんな生殖、種の保存のために四苦八苦して、シャケだって死にものぐるいになって上がってきて、産卵したら死ぬわけでしょ。カラスが目玉しか食わないような無残な形。だけど人間の場合は違う」
「はじめて聞いたことにショックを受けたから、それを取り次いだだけですよ、ある会合で。そこに変な左翼がいたんだよ。それが喧伝したわけだ。まあ、あれは裁判のための裁判で、あの人たちのパフォーマンス。その域を出ないね。」第二次訴訟
◎ 石原第二発言は、原告らを特定して誹謗し名誉を毀損したものであるとして、原告92名が石原都知事と東京都を提訴。(2006年4月20日)
◎ 第二次提訴に対する東京地裁の判決
◎ 裁判所は石原都知事と東京都の裁判を分離し、石原都知事について先行して判決を出した。
・ 石原知事に対しては、「公務上の行為に不法性があったとしても個人の責任は問われない」と、請求棄却。(2007年3月27日)
・ 東京都に対しても、石原のうそを「事実」と認めた思いやり判決で請求棄却。
(2007年7月31日)
◎ 東京都に対する地裁判決の内容(2007年7月31日)
「石原知事としてはただ松井教授の話を紹介しただけのつもりであったのに、前訴判決では石原知事自身の見解ないし意見の表明であると認定されたため、そのような認定に納得できないという気持ちを前提として述べられたものと認めるのが相当」「『変な左翼』は原告らを指すものではない」「『裁判のための裁判、パフォーマンス』は原告らを指すが、名誉毀損とはならない」「ここで石原知事が言っていることは、『石原知事が先行発言をしたある会合に変な左翼がいて、その変な左翼が石原知事の先行発言を聞き、社会に広めた。それを聞きつけた原告らが前訴を提起するに至った』ということであると考えられる。」
また、「シャケ発言」については「(石原は)人間の女性はシャケとは違うと述べており、人間の女性をシャケにたとえたものではないから違法性はない」※注2
☆ 「週刊女性」誌上での「ババア発言」はなかったことにしたの?!
☆ 前の判決が「発言は石原知事自身の見解」だとしたのに、どうなったの?
☆ 石原のうそを事実と認めたのはなぜ?東京都に対して高裁へ81名で控訴(2007年8月10日)
◎控訴審判決(2008年6月11日)
東京高裁第12民事部は、東京地裁の判決を容認する女性への差別加担判決を出した。◎判決の内容
棄却理由を述べているのは「変な左翼」発言のみ。地裁判決で「わずか5名のアンケートでは社会一般の受け止め方とは言えない」という部分を削除。それは私たちのアンケート結果、447名の回答中334名が「『変な左翼』発言は原告を『変な左翼』かそれに関わりのあるもの」との回答を提出したからだ。しかし、「どのような理由から判断したかは不明なので一般の読者の普通の注意と読み方を基準として判断した結果であると認めることはできない」と断定。この判例として最高裁判例(平成9年9月9日、第3法廷)三浦和義氏に対する「夕刊フジ」の名誉毀損事件を出しているが、一読して高裁判決とは逆の意味内容にしか読めないもの。※注3
さらに、不可解な「踏み込んだ」理由を付け加えた。「変な左翼」は原告を指すものではないと
強弁するために、石原の言っていることがうそだとしても、一般の人がうそだと知らないのだから、「『変な左翼』は原告らを指すものではない」と開き直った。
※注2 石原の「シャケ発言」は「産卵したら死ぬシャケ」を「あるべき」自然な存在」として、「生殖能力がなくなっても生き続ける人間の女性」を「反自然的存在」として「ババア発言」を上回る女性差別を繰り返したものだ。
※注3 判例内容「ある記事の意味内容が他人の社会敵評価を低下させるものであるかどうかは、当該記事についての普通の注意と読み方とを基準として判断すべきものであり、(中略)」そこに用いられている語のみを通常の意味に従って理解した場合には」(中略)他人に関する特定の事項を主張しているものとただちに解せないときにも、当該部分の前後の文脈や、記事の公表等を考慮し、その部分が修辞上の誇張ないし強調を行うか、比喩的表現を用いるか、または第三者からの伝聞内容の紹介や推論の形式を採用するなどによりつつ、間接的ないし婉曲に前記事項を主張するものと見るのが相当である」これは、むしろ私たちの主張「文脈をきちんと理解すれば原告を『変な左翼』かまたはそれに関わりのある者と社会的に印象付けるもの」という結論の根拠になるのではないかと考える。最高裁へ上告
61名の原告で上告(2008年6月24日)
上告理由書、上告受理申立て書を提出(2008年8月25日)
◎ 上告棄却(2008年11月11日)
☆ その朝9時、最高裁の担当係と11月20日午前10時に補充意見書などを持参し要請に行く約束をとったばかりだったのに!!その午後「上告棄却」との決定が出されたのだ。