• 『都政新報』2001年10月26日号「石原知事、福祉の会議で〝大脱線〟」

    『都政新報』2001年10月26日号「石原知事、福祉の会議で〝大脱線〟」

    石原知事は二十三日、「少子社会と東京の福祉」会議に出席し、東京大学大学院教授の松井孝典氏などの委員と熱心な議論を交わしたが、話題は思わぬ方向に向かった。
     「松井さんの言葉を借りると、一万年前に人間が農耕を始めた時点から、人間は地球に付着した癌になったっていうけど、私は本当にその通りだと思う。人間が文明を誕生させてから、地球上にあった自然の循環を全部変えた。それは非常に弊害をもたらした。この間ある新聞が、専門家に人類の余命はって聞いたら、八五%の人が六、七十年と答えた。私も前からそう思っていた」
     「そんなペシミズムじゃないし、かなり信憑性のあるリアリティの上に俺たちは生きているんだなという感じがしている。それで一方では、政治や行政だけども、社会工学的に一番規制力のある人間の方法論がそれをどこまで食い止められるのかということになるんだけども、まあ難しいし、不可能だ」
     「先進国ではどんどん人口が減っているが、途上国ではやたらと増えている。中国ではそれを食い止めようと、田舎の人間に一家庭に一人しか子どもを産むなと、罰金取るぞと言ったら、払えないから、避妊なんて方法知らないから、中国には六千万人以上いるっていうんだね、戸籍のない人間が。それがまたそれ同士結婚して子どもを産んで、それがどんどん増えている。その人間達がいろんな情報にさらされて、ある今までなかった願望を持って、中国の政府はそういうところはまったく無統制だから、一月六百人くらい不法入国するらしい。その人間達は非情にイリーガルな願望を持っているしね、犯罪というものを反省するような倫理観を持っていないし、動物的に生きているわけだから、願望のままに」
     「中国の九億人の農村社会の人口は、戸籍はあってもいっさい社会保障や医療保障はもらえない。都市戸籍になろうとしたら大学卒業してからでないとだめ。あるいは、企業に入ってそこに正式に社員として登録されない限り。これはとてもとても不可能なことで、その人たちが例えば日本に入ってきて、どんどん組織化されて、今までなかった犯罪をする。それに対する道徳的な反省というものを我々が強要しても、精神的な基盤そのものがない」
     「この間すごい話をしたんだ、松井さんが。私は膝をたたいてその通りだと。女性がいるから言えないけど…。本質的に余剰なものは、つまり存在の使命を失ったものが、生命体、しかも人間であるということだけでいろんな消費を許され、収奪を許される。特に先進国にありうるわけだ。でね……、やっぱりやめようか(笑)。あれが実は地球の文明なるものの基本的な矛盾を表象している事例だな」
     約四十分間にわたる委員との有意義な議論を終えた知事は、「後ろ髪引かれる思いで」と苦笑しながら、「つまらない会議」(知事)へと向かった。
     同会議は、経済社会の大きな変動が続く中、大都市東京都が抱える課題について、経済、社会、家族等多様な問題について多様な専門家に意見を聞いて、今後の福祉局の施策立案の参考とする目的で設置された。七月から今回を含めて三回の会議を開催している。委員は、国際日本文化研究センター教授の川勝平太氏、上智大学文学部助教授の栃本一三郎氏、政策研究大学院大学教授の藤正巌氏、東京大学大学院新領域創成科学研究科教授の松井孝典氏、元日本経済新聞社の森野美徳氏、サイエンスライターの柳澤桂子氏。